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舌下免疫療法
舌下免疫療法とは
アレルギーの根本改善を目指す治療法です。
当院ではアレルギー疾患を専門に診療しており、舌下免疫療法も治療選択肢のひとつとして以前から行ってきました。
免疫療法は一見すると新しい治療に思われがちですが、実は50年以上前から皮下注射による「減感作療法」として行われてきた歴史のある治療法です。舌下免疫療法は、近年になって錠剤タイプが実用化されたことで、より手軽に行えるようになりました。
この治療は、対症療法(鼻水やかゆみを抑える)ではなく、アレルギー反応そのものを免疫の働きで抑える根本的なアプローチです。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、「治癒」を目指せる治療法とも言えます。
昔から行われていた免疫療法の考え方
興味深い例として、漆職人の世界では、親方が新人にごく微量の漆を舌下に垂らし、少しずつ慣れさせることでアレルギーを起こしにくくしていた、という慣習があります。これは、まさに免疫療法の考え方と一致しています。
また、少量の粉ミルクを飲んでいた赤ちゃんが、牛乳アレルギーになりにくい、あるいは食物アレルギーの子どもが、少しずつ症状が出ない範囲で食べ続けているうちに普通に食べられるようになったなど、自然な形で免疫療法が行われている例もあります(※ただし、自己判断では行わず、医師にご相談ください)。
対象となるアレルゲン
日本で現在行うことができる舌下免疫療法は、
- スギ花粉
- ダニ(ハウスダスト)
のアレルギーが対象です。
どちらも有効率が高く、多くの方におすすめできる治療法です。
舌下免疫療法が効くしくみと対象疾患
アレルギー反応(I型アレルギー)は、以下の3つが揃ったときに起こります。
- アレルゲン(原因物質)
- IgE抗体
- 標的臓器の過敏性(鼻・気管支・皮膚など)

つまり、免疫療法はアレルゲンに対してIgE抗体が関与するアレルギー反応を抑えるものなので、そのアレルゲンが関わっているアレルギー性鼻炎・気管支ぜんそく・アトピー性皮膚炎・結膜炎などさまざまな症状に効果が期待できます。


例えば、ダニアレルギーが誘因となる小学生以上の気管支ぜんそくにはとても有効です。
一方で、赤ちゃんのゼーゼー(喘鳴)の原因は主にウイルス感染なので、効果が期待できるかどうかは、検査結果やこれまでの病歴を踏まえて慎重に判断します。
治療の流れと通院頻度

初回
- 診察室で医師の管理のもと、ごく少量のアレルゲン入りの錠剤を舌下に1分間保持してもらいます。
- 軽いかゆみなどの違和感が出ることがありますが、アレルゲンを直接取り込んでいるためで、「効いている証拠」とも考えられます。
2回目(1週間後)
- 問題がなければ、薬の量を2.5~3倍に増量します。
- 以降は、毎日ご自宅で服用を継続していただきます。
通院頻度
- 月に1回、診察と処方のために受診していただきます。
- 継続中は、経過を確認しながら、安全に治療が進むようフォローします。
治療効果が出るまでの期間

- 3か月ほどでIgG4抗体が増えはじめ、半年ほどで効果を実感する方が多いです。
- 特にスギ花粉症の方は、「今年は軽くすんだ」と実感されるケースが多く、継続意欲につながっています。
ただし、途中で中止してしまうと元に戻るため、継続することが大切です。
3年間の継続がひとつの目安です。
長く感じられるかもしれませんが、実際には効果を実感される方が多く、中断される方は少ない印象です。
何歳から始められる?
- お薬自体には年齢制限はありませんが、「1分間、舌下に薬を保持できるか」が重要なポイントです。
- そのため、小学生以上のお子さまからが目安となります。
小さなお子さまでも治療が危険というわけではなく、むしろ早期に始めることで生活の質(QOL)を高められるため、将来的には大きなメリットがあります。
子どものうちに始めるメリット
- 標的臓器のダメージを抑えられる
- 症状が悪化する前に予防的に治療ができる
- 日常的な薬の使用を減らせる
- 費用面でも比較的負担が少ない
予防接種と似た考え方で、アレルゲンに対して「正しい免疫のつき方」を学習させる治療です。
通院しやすい年齢のうちにスタートできるのは大きな利点です。
副作用と安全性
- よくある副作用は、口の中のかゆみや違和感です。
→ ほとんどの場合、一時的に抗ヒスタミン薬を併用するなどで対応可能です。 - ごくまれにアナフィラキシーなどの強い反応が起こる可能性もゼロではありませんが、
→ 従来の注射による免疫療法に比べて、舌下免疫療法は非常に安全性が高い治療法とされています。
参考リンク
詳しい情報は、以下の製薬会社の解説ページもご参考にしていただけます。
※外部リンク(公式サイト)に飛ばす場合はここにリンクを設定
当院で治療を希望される方へ
- 医師からおすすめする場合もありますし、ご自身の希望で始めることも可能です。
- 初回はアレルギー科の診察ができる日・時間帯にご来院ください。
- 初回と1週間後(5~7日後)には来院が必要ですが、その後は月1回の通院で継続可能です。
- 特殊な治療のため、治療開始時には同意書をご記入いただく必要があります。
ご不明な点は、お気軽にクリニックまでお問い合わせください。
※この記事は、当院の山本医師の経験と考えに基づき、解説しております。
これはあくまでも当院の医師による考え方の一つであり、他の医療機関での診療方針とは異なる場合があります。他院での診療時にこの記事の内容を根拠として提示することはご遠慮ください。
体調や症状について不安がある場合は、自己判断せず、必ずかかりつけの医師にご相談ください。